NHK総合診療医ドクターG【▽隠された謎に研修医が挑む!
だるくてつらい▽はたして病名は?】
◎ドクターG:鈴木富雄(名古屋大学医学部附属病院・総合診療部医師)
◎研修医(医師免許を取得して臨床研修を行なっている医師):
・大屋寛章(東京都・国立病院機構東京医療センター)
・大野彰子(岡山県・倉敷中央病院)
・後藤秀彰(愛知県・安城更生病院)
●今回の患者…山川信弘(56歳男性、自動車整備工場経営)※身長169cm、体重63kg
【基礎データ】体温36.5度、血圧158/87、脈拍90回/分
【主訴】だるくてつらい
精いっぱい働いて不況を何とか乗り切ってきた自動車整備工場の社長(56歳男性)。
整備の仕事はスムーズにできるが、事務作業をすると息苦しくなる。2年前、
飲み仲間の死を機にタバコをやめ、酒もほどほどにしてきたが…。この日、
ボウリングをしていて力尽きて倒れこんだ。
【診断】肝肺症候群
もともと肝臓が悪い人で、心臓や肺の病気がないにもかかわらず、息苦しくなる病気。
慢性肝炎や肝硬変になると、血管が拡張したままになり、酸素と二酸化炭素の交換が
うまくいかず、結果的に肺動脈に取り込まれる酸素が不足した状態になり、息苦しくなる。
肺にたまる血液の重力の関係で、寝た状態よりも、起き上がった状態の時に、特に息苦しさは増す。
今回の患者は、かつて大量に飲んでいたアルコールを減らしたものの、肝炎が徐々に
進行して発症に至ったケース。肝臓が悪いことから、だるさ・黄だんなどの症状が
でていることも、診断の材料になる。肝肺症候群は、1977年ころに報告された
比較的新しい病気で、治療はこの病気の原因となる血管拡張を押さえる薬を飲んだり、
悪かった肝臓を良くする必要がある。重症の場合は、肝移植をするしかない。
ドクターGは山川さんに、在宅酸素療法(自宅で酸素を吸入する治療法)を行いながら、
生活習慣を改善するため断酒し、仕事も休みを取るよう指導、若手の育成を中心に
疲れをためずに仕事をすることを勧めた。